憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「ここ……あたしの部屋じゃん」
動画はあたしの部屋の中で始まった。
位置からしてベッドにカメラを置いて撮影しているようだ。部屋の中はカーテンからもれた月明かりでうっすらと照らされている。
その状態が約一分、続くと、部屋のドアが開き、誰かが中に入って来た。
「あ、あたし…」
……それは樋口七海だった。
そしてすぐに、それが憑霊に乗っ取られたあたし自身の姿であると悟った。
映像で乗っ取られた自分を見るのは二回目だった。前回とは違い、かなり落ち着き払った様子だ。
「ん…?」
動画のあたしの手には、どこにでもあるコンビニの大きなレジ袋が握られていた。袋にはボーリングの玉のようなものが入っていて……袋の底には、何か黒い液体が溜まっているのが見えた。
……息を飲み、あたしは映像に釘付けになる。
映像の中のあたしは、カメラ目線でニヤッと笑うと、レジ袋に手を突っ込み、中のものを取り出した。
それを見て……
「うわぁぁああああっ…!!!!!!!!!!!!!!!」
あたしはスマホを地面に落とし、金切り声で悲鳴を上げた。