憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~

……殺しちゃったの……あたし?


足元には頭蓋骨から脳みそがこぼれ、ぽっかりと口を開けて死んだ生徒の死体がある。人間にしては、もろすぎる体だ。


「うぇっ……」


嗚咽しなから、言いようのない不安と罪悪感が胸に広がる。死体の放つ独特な悪臭が、あたしの神経を逆撫でる。


そんなあたしに、言い訳のような考えが浮かんだ。


……そうだ。これは夢の中での出来事に過ぎないんだ。


本当に人を殺したわけじゃない。


それに、この場を切り抜けないと憑霊に捕まって体を奪われるのはあたしの方なんだ。……そんなの絶対に嫌だ!


そう思い直して、あたしは消火器を目の前の生徒達にむかって振り回した。


「ど、どいて…!! 通して!!」


間を抜けようとすると、距離をとっていた生徒達も再びあたしに飛びかかって来た。


頭を殴る。血が飛び散る。制服が返り血で真っ赤に染まる。………そうして、なんとか生徒達に応戦する。


だけど教室にいた生徒達も集まってきて、次第に逃げ道は塞がれていく。


……ダメだ! 逃げられない!


その間にも、憑霊はあたしとの距離を確実に縮めて来る。


このままだと憑霊に捕まるのも時間の問題。


「だったら、一か八か!!」
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