憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
レジ袋からあたしが取り出したのは……人間の頭部。そしてそれは、眠りに落ちる前に一緒だった……カイトさんだった…。
言葉にならない恐怖を感じ、体が激しく痙攣する。あたしは耳をふさいで「嫌だ、嫌だぁ!!」と何度も叫んだ。
そんなあたしにはお構い無しに、地面に落ちたスマホは、まだ続きを再生していた。
映像の中で、あたしはカイトさんの頭を持ったまま、クローゼットの扉を開いた。
そのまま乱暴に頭を中に投げ入れ、扉を閉めると、今度はさっきのレジ袋から一丁の出刃包丁を取り出した。赤黒い垢のような血がこびりついた包丁だ。
動画の中のあたしは撮影するスマホに近づくと、おもむろに制服の腕をまくった。
露出した肌に、あたしは包丁を突き立てる。そして何のためらいもなく、痛がる様子も見せずに、包丁でばってんの傷を刻んだ。
「全て奪うまで……ゲームは終わらない。……この体も、私のモノ…」
最後にそう言い残すと、動画は真っ黒な映像に変わり、10秒くらい経て、終了した。
「…………」
あたしは魂が抜けたように座り込んだ。
息をするのもやっとなくらい動揺しながら、左腕の袖を上げる。
「っ…!!」
そこには動画にあったものとまったく同じ、ばってんの傷が刻まれていた。
その瞬間、嫌でもあの動画が現実に起きたことであると実感した。