憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
憑霊にカイトさんは負けた。……そしてカイトさんを……あたしがこの手で殺したんだ。
胸の中で大きな罪悪感が広がる。それを例えるなら……もう二度と今までの自分には戻れないような……そんな絶望的な感覚だった。
口の中がカラカラに乾き、ますます震えが激しくなる。そんなあたしに、ふとあることが頭を過る。
「そうだ……クローゼット…」
……もしあそこを開けば、切断された頭があるのだろうか…?
そんな思いにかられ、あたしは立ち上がり、クローゼットの前に向かう。
外面からは何の変化もないいつも通りのクローゼットだ。だけど妙に禍々しく不吉な気配をその向こうから感じた。
指先が取っ手に触れる。体の震えはクローゼットを開けようとするほど激しくなり、視界が歪むほど異常な緊張を感じた。
やっと取っ手をつかむと、それから決心がつくまで、また長い時間がかかった。
意を決し、あたしは目を閉じた。そしてクローゼットを開け、少しずつ瞼を開くと、
「あれ……」
中は、いつも通りだった。
服がかけてあるだけで、頭はおろか、血の一滴、見当たらない。
安心した……というよりは、むしろ不気味な不安に陥った。
体の力が抜け、近くの壁にもたれかかる。その瞬間、ドッと疲れが出て、体が石のように重くなった。
ずっと夢の世界に閉じ込められていたのに、体は何日も徹夜したみたいに疲れきっていた。
あたしはそのまま、気絶するように眠りに落ちてしまった…。