憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
真実の絆
☆☆☆
しばらく走り、見知らぬ公園にたどり着いた。
公園の水飲み場の蛇口を全開にひねると、あたしは狂ったように手を洗った。
自分でもおかしな行動だという自覚はあった。
けれどこの手が人の命を奪ったと思うと……あたしの手には、見えない血と肉塊が、神経を逆なでるほど不快に、べっとりとこびりついている気がしたのだ。
「七海!」
そんなあたしを追いかけてきた由梨と英美が声をかけた。
「何やってんのよ? こんなところで…」
由梨はあたしの腕をつかみ、蛇口から引き離すように後ろにひっぱった。弱々しく、あたしは尻餅をついて倒れた。
呆然とし、あたしは息を切らせ、蛇口から勢いよく流れる水をじっと見つめる。
そうしているうちに、瞼に涙が溜まり、
「死んだ……あたしのせいで……この手で……あたしが殺したんだ!!」
断片的な言葉で、あたしは叫んだ。拭いきれないほどの涙が溢れ、止まらない。
深い後悔と罪悪感。……自分を呪うような言葉が、頭を巡る。
「…………」
そんなあたしを、由梨と英美は声をかけることもなく、複雑な面持ちで見つめていた。
その顔の裏で……二人は何を思っているのだろう?
あたしはどうしても、二人の表情に、悪夢の遊園地で見た、二人の感情を吐き出すような姿と言葉が重なってしまった。