憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
ぶたれる…! あたしは思わず目を閉じた。すると頬に、柔らかく、温かいぬくもりを感じた。
目を開けると、由梨はあたしの頬を包み、顔を真っ赤にして泣いていた。
「そうやって勝手に決めつけないでよ。モデルを辞めたとか、父親がどうとか……そんなことで、私が七海を嫌いになるわけないじゃない!」
感情的な声で、由梨はあたしに言った。
「由梨……」
由梨の声に、どこか目が覚めたような気持ちになった。由梨のキラキラした瞳から、止めどなく涙が溢れる。その涙を隠すように、由梨はあたしの胸に顔をうずめた。
そして涙で滲んだ声を振り絞り、あたしに言った。
「だって友達として……私達が七海と一緒に過ごした時間は、何があっても……いつだって変わらずにあるはずよ。
……七海が何者かなんて関係ない! 私とずっと一緒にいてくれた七海だから……私はいつまででも……七海と友達でいたいの!」
由梨の言葉に、ジーンと胸が熱くなった。嘘でなく、本心から出た由梨の本当の思いだってことはすぐに伝わった。
すると英美も、小さな体であたしの脇腹の辺りに飛びついてきた。
「オレもっす……いや、オレだって! 七海さんに憧れる気持ちは、モデルを辞めたからとか、そんなことで消えたりしないっす!」
英美は涙目になり、あたしを見上げた。
「オレはただ、七海さんのことが大好きなんです!! いつだって自分を偽らず、ありのままの姿でいる七海さんだから、オレはバカみたいに、七海さんに憧れてるんです!!」
英美は由梨に負けないくらい気持ちのこもった声で言った。あたしは思わず、由梨と一緒に英美を抱き締めた。そして由梨は言った。