憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「だけど、もし万が一のことがあったら……二人に、約束してほしいことがあるの…」
それは静華の話を聞いたときから、あたしがずっと胸の中で考えていたことだった。
二人は表情を固くし、うんとうなずいた。あたしは覚悟を決め“そのこと”を口にした。
「もし目が覚めて、あたしが“七海”じゃないと分かったらね。
そのときは静華を─────────────。」
あたしの言葉に、二人は目を見開いて驚いた。あたしはまっすぐ二人の目を見て「約束……できるよね?」と問いかける。ふたりは唇をぎゅっと結び、静かにうなずいた。
「七海の頼みなら…」
由梨が言うと、あたしはもう一度「ありがとう」と口にした。
その瞬間、背筋に身がすくむような寒気が走り、
「ハージメヨ。ハージメヨ…」
と憑霊の……静華の声が響いた。