憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「なんだか医療ドラマみたい」
思わずそんな言葉が出た。手術室に入ったのは初めてだけれど、どことなく設備が古くさい。そのとき、
バンッ!! と鉄の扉が鳴る音がした。そして扉の向こうから「お嬢ちゃん。どこだい? お嬢ちゃん…」とあの男の声がした。
やばい、こっちに来る!! とっさにあたしは棚の影に身を潜めた。同時に頭を過る。
……いやダメだ!! 隠れてるだけじゃ!! もしあいつの持つ首の中に静華のものがあるとすれば……あいつをここで倒して確認しないと!!
手術台の方を見ると、近くに数本のメスが用意されていた。あたしはその中の一本を取り、また棚の影に隠れた。
ガチャッ!! と手術室の扉が開く音がした。中にあの男が入ってくる。
「いるのは分かっているよ。お嬢ちゃん。恐怖で濡れるお嬢ちゃんの呼吸が漏れてるんだ。さぁ、出ておいで。僕のコレクションと交換しよう…」
男はそう問いかけ、手術台の周りを歩く。ずるずると男の言うところのコレクションを……五つの人間の首を引きずりながら。
……こうなったら、見つかる前にやるしかない。
ぎゅっとメスを握る手に力が入る。そのとき、男があたしの潜む棚の近くで止まり「んん? 聞こえる。聞こえるぞ。まるで赤ん坊の呼吸音だ。すぐ近くにいるな…」と言い、キョロキョロと辺りを見渡した。