憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
男を見下ろしながら、あたしは血の海の上で佇む。
やった! 勝った!! とかいう気持ちより、ねっとりとした嫌悪感が胸に広がる。
そしてなんとなく、昨日までの自分なら……殺されていたかも。という思いが過った。
「そうだ、ボーっとしてる場合じゃない…」
我に帰り、あたしは男の腰につけていた頭に手を触れ「アタマ返す、あたしの勝ち」と宣言し、ちょうど二日目の右腕のときのように確認を始めた。
……急がないと!! この個室で“静華”に来られたら、さすがに逃げ場がない。
そんな焦りを覚えながら、最後の頭を確認する。けれど悪夢は終わらない。この中に、静華の頭はなかったのだ。
「はぁ…」
思わずため息が出た。でもまだ探してないところがたくさんある。落ち込んでいる暇があったら、一歩でも前に進まないと。
手術台の上にあった右足の靴を履き、あたしは手術室を出た。せっかく病院の最上階である四階まで来たのだから、ここから探して、一階ずつ下へ降りていこう。
そう思い廊下を歩くあたしの横に、大きなガラスの窓があった。