憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
そんなとき、廊下の奥からトン、トン…と、誰かが歩く足音が聞こえてきた。
音がした方を見ると、暗闇の中から、誘導灯の緑色のランプに照らされ、静華が現れた。
「ミー、ツケタ…」
静華の声が廊下に響く。
……もう迷っている暇はない。一か八か、あの場所に向かおう!!
そう思い、あたしは全力で走り出した。振り返ると、余裕なのか? 静華はまだ歩いていた。
走りながら、あたしはある案内板を探す。どこだ!? 場所さえ分かれば……
すると近くの柱に『2F C南 分娩室』という案内版と方向を示す矢印があった。
「二階の南!」
あたしはその案内版に従い、分娩室に向かう。
……正直、確実にそこにあるとは言い切れない。ほとんど、あたしの直感みたいなものだ。
だけど分娩室は、あたしが生まれた場所であり、そして静華が生まれるはずだった場所でもある。病院の中で、静華がそこに特別強い思いを抱いているとしたら……そこを探す価値は十分にあるはず!!
その直感を信じ、あたしは走り続ける。ひたすら走って、足がどんなに痛んでも、激しく息が切れても、前へ進み続けた。するとあたしは、ついに分娩室の扉の前にたどり着いた。