憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
息を切らせ、耳をすませる。いつの間にか静華の足音は聞こえなくなっていた。
扉を開き、あたしは分娩室の中に入る。入り口は細い通路になっていて、奥の部屋から白い光が漏れていた。
どことなく不気味さを感じながら奥に進むと、そこには広々とした部屋に、出産で使うのだろうか? 見慣れない医療器具や洗面台、そして、さっきの手術台よりは幾分、寝心地がよさそうな分娩台があった。分娩台の上には手術室で使うような無影灯があって、部屋の明かりはそれだけだった。
「ん…?」
分娩台の上に、何か丸いものが置いてあるのが見えた。ゆっくりと近づきながら、それが何なのかを確認する。
「あっ…!!!!」
思わず高い声が出た。それは人間の頭だった。反対側を向いていて顔は分からないけれど、髪はあたしと同じくらい長く、同じような色をしていた。
「間違いない……静華の“頭”だ!!」