憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
エピローグ
☆☆☆
八月の清んだ青空の下、一人の少女が、あるお地蔵様の前で目を閉じ、手を合わせていた。
ここはたくさんの水子地蔵が祀ってあるお寺で、若い女性がお墓参りに来ることは珍しくなかった。
少女がしばらくそうしていると、ビュッと涼しい風が吹き、少女のブロンドのような長い髪がなびいた。少女はようやく目を開け、水子地蔵の顔をじっと見つめる。水子地蔵の前には、白い花と赤い風車が供えられていた。
「七海、そろそろ行くわよ」
少女を呼ぶ女性の声がした。彼女の母親だろう。その女性は髪型が黒髪のショートカットであること以外、少女とよく似ていた。
「はーい!」
子供のような返事をし、少女は立ち上がる。そしておもむろに、水子地蔵の前にあった風車を手に取った。
風車はクルクルと風で回る。少女は口元に笑みを浮かべると、母親に向かって歩いて行った。
憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミのカラダ~
~おしまい~