憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~

まるでスローモーションのように空中にいる時間が長く感じる。


あと1m!! あと50cm!!


足の爪先が音楽室のベランダの柵にあたる。


だけどあとちょっとのところで爪先がすべり落ちて、体が地面に吸い込まれていった。


このままじゃ落ちる!


とっさに両手を思いっきり上にのばして音楽室の柵をつかんだ。


「……っ!!」


全体重が両手にのしかかる。あたしはギリギリのところで耐えて柵にぶらさがった。


「セ、セーフ」


なんとか理科室から隣の音楽室のベランダに飛び移れた。


ここから音楽室に入れば憑霊が理科室にいる間に逃げられる。


そう思い、ホッと胸をなでおろすと、


ピチャ。


上から顔に何か生暖かい液体が落ちてきた。


とっさにあたしは上を見上げた。
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