憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~

鏡に書かれた文字を見て、あたしは目を見開いた。


『全て奪うまで、ゲームは終わらない』


鏡には乱雑な文字でそう書かれていた。


しかもその字はナイフについていたものと同じような……真っ赤な血で書かれていたのだ。


「どういう意味よ、全て奪うって…?」


そう呟き、息を飲んだ。


多分これは憑霊が体を乗っ取っている間にあたしに残したメッセージだ。


ゲームに負ければ憑霊に自分の体を奪われてしまうけど…。


他にも憑霊は何かを、あたしから奪おうとしてるってことなの?


言い様のない不安にかられながら、ふと鏡の下にある洗面台に視線を移した。


そこには洗面台に一杯になった水の中に、長くて黒い髪の毛が排水溝に詰まり漂っていた。


蛇口からは相変わらず水が出続けている。そのせいで洗面台から水があふれていた。


「ん? ……なんだろうあれ?」


水の中に漂う黒い髪の毛に混じって、何か細長いソーセージのようなものが見えた。


よく見ると、それは銀色に光る金属のようなものを巻いている。しかも何か赤い血のようなものを出していた。


不気味に思いながらも、あたしはそれを手ですくい水の外に引き上げた。
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