憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
あと何時間か経てば恭也が起きて電話に出るかもしれない。
そんな期待を持って、あたしは朝になるのを待つことにした。
ベッドの上に体育座りして時間が過ぎるのを待つ。手には携帯を握ったままだ。
ただ待つしかない時間の中でも色々な思いがあたしを苦しめた。不安で心が押し潰されそうだ。
「……なんで、側にいてくれないんだろう?」
ふと呟き、深いため息をついた。
思い返せば、いつだってそうだ。
こうしてあたしが不安なとき、落ち込んでいるとき、誰かに相談したいとき……いつだってあたしは、家でひとりぼっちだった。
あたしにはお父さんがいない。死んでいるとかじゃなくて、正式な父親がいない。
ずっとお母さんとふたりで暮らしてきた。だけどお母さんはほとんど家にいなかった。
ふたりでゆっくり話したことだって数えるほどしかない。
理由は分かってる。
ひとつは、お母さんの女優の仕事が忙しいこと。
そしてもうひとつは、あたしが、望まれて生まれた子供じゃないからだ。