憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「ああ、七海ちゃん。恭也の彼女の。……ごめんね。恭也、昨日の夜から家に帰ってなくて」
「えっ!? 帰ってない……」
「うん。恭也、夜中にコンビニに行ってくるとか言って出ていったままなの。
どうせまたサッカー部の悪い先輩とバイクで走りに行ったんだと思うけど。朝になっても連絡がなくて……」
「そう、ですか……」
少し話してから電話を切り、あたしは呆然と立ち尽くした。
何かの間違いであってほしい。……そう願っていた淡い期待が、もろく崩れ落ちた。
おそらく昨日の夜、恭也を外に誘ったのは憑霊に乗っ取られたあたし自身だ。
……そしてそのあと、あたしは恭也の指を自分の手で切り落としたんだ。