憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「う、嘘でしょ!! 昨日よりずっと速いし!」
あたしはすぐに階段を登り上へと逃げていく。
まだ憑霊との距離はある。……だけど憑霊は昨日とは比べものにならないくらい移動速度が上がっていた。
もしかして、あたしが昨日、心臓を返したから!?
ふとそう思った。
心臓は全身に血液を送り出す大切な器官だ。
それが体に戻った分、本来の運動能力を取り戻したのかもしれない。
「ヤバい…!! 追いつかれる!!」
今はなりふり構っていられない。
ゼェゼェと呼吸を乱し、足の筋肉が痛みで熱くなるほど足を前に出し続けて、とにかく全力で階段を上る。
ペタペタペタペタペタペタ!!
憑霊はどんどんあたしの方に迫る。
「あっ!!」
ようやく目の前に階段の終わりが見えた。あそこまでいけば隠れる場所があるかもしれない。
「やっと着いた…!!」
あたしは階段を上り終え、最後の鳥居にタッチした。限界まで走ったせいで息が苦しくて肺が破れそうだ。