憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~

「ひょ、憑霊っ…!!」


あたしはとっさに障子を閉めた。


さっきの声で居場所がバレたのかもしれない。


どうしよう。……逃げたとしても今の憑霊には足の早さで勝てる気がしないし。


ペタペタ……ペタペタペタペタペタペタペタペタ。


足音はどんどんあたしのいる部屋に近づいてくる。どうやらあたしがここにいることがバレたみたいだ。


「ひぃっ……!!」


障子越しに見えたのは、月明かりに照らされて伸びる黒くて大きな憑霊の影。……障子一枚を隔てた向こうに、あいつはいる。


……もう考えている時間はない!!


「ごめんなさいっ……!!」


とっさにあたしは死体の山の中に潜った。女の長い黒髪と豪華な着物で身を隠し、死んだ人間のように息を止める。


ズザザザ…!!


障子がゆっくりと開く。死体の隙間から憑霊が部屋の中に入ってくるのが見えた。
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