憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~

男の持つ刀の柄に触れると、刀が男の手と腹から滑り床に落ちた。


あたしはその刀を拾い上げる。


「うわっ、思ったより重い…」


ずっしりとした鉄の重さを感じた。


刀身には血がべっとりとついていたけれど、刃が研ぎ澄まされていて鏡のように月の光を反射している。


「これって武器になるのかな…?」


そう思い、試しに近くの柱にむかって刀を振り下ろしてみた。


すると力の弱いあたしでも柱には一直線に切り傷ができた。かなり切れ味がいいみたい。武器として使えそうだ。


「……この刀なら、憑霊を倒せるかも…」


ふと思った。


この刀で憑霊の手足を切れば、憑霊はあたしを追いかけることができなくなる。


そうすれば、ゲームは余裕でクリアできる。


「…………」


刀を持つ手にギュッと力が入る。


……でもまだだ。戦うとしたら最後の手段。次に出くわしたとき、この刀で立ち向かおう。


そう思い、あたしは刀を持って部屋を出た。


また憑霊を気にしながら右腕を探し屋敷の中を歩く。


さっきと違って両手には大きな刃物がある。そのおかげか、少しだけ恐怖と不安がやわらいだ気がした。
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