憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
縁側の屋根の瓦が激しく揺れる音がした。
驚いて屋根の方を見ると、瓦が何枚か落ちて、にゅっと一本の足が突き出てくる。
「ミー、ツケタ……」
その声とともに、屋根から憑霊が地面に飛び降りてきた。
「うあぁっ……!!」
憑霊は手と足で地面に着地し、あたしと向かい合う。
……完全に油断した。まさか、こんなところにいたなんて。
あたしは両手の刀に視線を向ける。そして息を飲み、刀を憑霊に向けた。
「こ、来ないで!! 来たら殺すから!!」
あたしは強気に叫んだ。だけど恐怖で手が震え、刀身がプルプルと小刻みに揺れる。
さっきまで心強かった武器も、憑霊の前だとなんだか頼りなく感じた。
「フフッ、フフフッ……」
憑霊はそんなあたしを嘲笑いながらジリジリと距離を詰める。
どうしよう…!? 走って逃げる…!?
でも、この距離だと逃げ切れる自信がない。
「こうなったら、やるしか…!!」
あたしは覚悟を決め刀を振りかぶった。
狙うは左腕。切断さえできれば、憑霊はあたしを這って追うことができなくなる!!
腕を切ることには抵抗があったけれど、今はためらっている余裕はない。
「うあぁぁあ!!」
叫び声を上げながら、あたしは憑霊の左腕に思いっきり刀を振り下ろす。
刀の刃が憑霊を切り裂く……はずが……