憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
(二人の)キズ
☆☆☆
「もう、いないよね…?」
5分くらいして、あたしは憑霊が近くにいないことを確認してから押し入れを出た。
すでにゲームが始まってからかなりの時間が経っている。
きっと現実世界では、憑霊があたしの体を乗っ取って暴れている頃だろう。
「そういえば、英美と由梨は無事なのかな…?」
今さらだけれど、二人のことが心配になってきた。
椅子に縛られているとはいえ、二人は憑霊に乗っ取られたあたしのすぐ近くにいる。二人のためにも、なるべく早くゲームを終わらせた方がいいかも。
「けど焦っちゃダメだ。慎重に……なるべく憑霊に出会さないように探さないと…」
あたしはまた屋敷の探索を再開した。
耳と目で憑霊がいないことを確認しながら屋敷の奥へ進んでいく。
すると、ついにあたしは屋敷の最深部らしき扉の前にたどり着いた。
「なんか、ヤバそうな雰囲気…」
刀で切りつけられたような傷が一面についた真っ赤な扉だ。……それに何か不気味で怖い気配を扉の向こうから感じる。
……正直、入るのをためらってしまう。
だけど、直感でここに何かがあると感じた。
「よし、行くか…」
あたしは勢いよく扉を開けた。