憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
それから気がつくと、あたしは個室にあるベッドの上にいた。長い間ずっと眠っていたように頭がぼんやりとする。
「あっ、よかった! 七海ちゃん、目が覚めたのね」
目の前には看護師と白衣を着た若い医者、そして、顔を伏せたまま口を閉ざしたお母さんの姿があった。
「あれ、ここは…?
あたし、お風呂場にいたはずじゃ……」
気絶したショックで頭が混乱していた。
「落ち着いて。ここは病院よ。七海ちゃん、昨日の夜に運ばれて半日近く眠っていたのよ」
看護師が言った。
そっか。昨日あのまま気を失っちゃったんだ。……ぼんやりと昨日のことを思い出し、あたしは体を起こした。
「痛っ!!」
頭に痛みが走った。とっさに触れると、頭には包帯が巻かれていた。
「ダメよ。まだ触っちゃ」
看護師があたしに言った。それに続いて医者が傷について説明した。
「昨日の夜、お風呂場で割れた鏡で右目の上を切ったみたいでしてね。出血がひどくて八針も縫ったんですよ」
「えっ…?」
医者の言葉に、黒い霧のような不安があたしの胸を包んだ。
「でも幸い感染症や意識障害の恐れはないみたいですよ。あと少しずれて目に入っていたら失明の危険だって……」
医者が言いきる前に、あたしは頭の包帯をビリビリっと破いた。
「ちょっと、七海さん!」