憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
反転世界
☆☆☆
そんな辛い思い出に浸りながら、あたしは祭壇にある神境を見つめた。
1ヶ月以上経った今でも、傷は変わらずあたしの顔にあり続ける。そして、あたし自身の過去も。
なんとなく、あたしは鏡に映る傷に手を触れた。すると、
ポチャン。
「えっ…?」
鏡にまるで池に石を落としたように波紋が広がった。
なんだか吸い込まれそうな感覚がして、あたしは手を引っ込めた。
「見間違いかな?」
一瞬だけ、指先が鏡の向こうに行った気がした。
……いや、でもまさかね。
不思議に思いながら、手の平をじっと見つめる。
そのとき。
ガガガガガガガガガガガガガガガ…!!
上から激しい音がした。見ると赤色の天井がギシギシと歪み、木屑が豪雨のように落ちてくる。
あっけにとられていると、バキバキバキバキ…!! と天井の真ん中の辺りが壊れた。そこから黒い塊のようなものが地面に落下した。