京都伏見・平安旅館 神様見習いのまかない飯
会社は有休消化でもう出勤しなくていい。
朝起きて鏡を見れば、元気がない自分の顔がある。
少したれている眉毛のせいでなおさら悲しげに見えた。
ひとりでアパートにいたのでは自分の居場所のない世界でまるっきり迷子になってしまいそう……。
まだ生きている定期で東京駅に出てきた。構内のベーカリーショップでクロワッサンとコーヒーを注文して、ゆっくり味わう。こんなに時間があるのは久しぶりだった。ぼんやりと乗降客を眺める。忙しそうに行き交う人々が、今となってはうらやましい。
溜まりに溜まった有休はあと一カ月。
こんな毎日が続くのかな。
次の職探しをしなければいけないのだろうけど、まだそんな気になれない。
足早に過ぎ去る人の向こう、壁に貼られた大きなポスターに、ふと目が留まった。
いかにも楽しげに笑っている女性が緑と寺院の間に立っている。JRでおなじみの京都旅行を勧めるポスターだ。
「……京都、行こうかな」
気がついたときには私はクロワッサンを口にねじ込んでコーヒーで流し込み、席を立っていた。
いつの間にか家に戻った私は、無心でキャリーバッグを用意していた。
着替えの服などをねじ込んだ私は、再び東京駅にやってきた。
先ほど眺めたポスターをもう一度確認。そうだ、京都へ行くんだ。
そのまま向かうは新幹線ホーム。カードで切符を購入し、駅弁を買った。ちょっと考えてビールも買う。
新幹線に飛び乗った。切符は窓際の席だ。
目指すは京都。日本人の心の故郷。
静かに新幹線が動き出した。
東京駅が後ろに流れていく。
そうだそうだ、京都に行くんだ。
私はちょっとぬるくなった缶ビールを開けた。
昼酒だって飲んじゃうんだから。
ぷしゅっという音がして、少しビールの泡が吹き上がった。
朝起きて鏡を見れば、元気がない自分の顔がある。
少したれている眉毛のせいでなおさら悲しげに見えた。
ひとりでアパートにいたのでは自分の居場所のない世界でまるっきり迷子になってしまいそう……。
まだ生きている定期で東京駅に出てきた。構内のベーカリーショップでクロワッサンとコーヒーを注文して、ゆっくり味わう。こんなに時間があるのは久しぶりだった。ぼんやりと乗降客を眺める。忙しそうに行き交う人々が、今となってはうらやましい。
溜まりに溜まった有休はあと一カ月。
こんな毎日が続くのかな。
次の職探しをしなければいけないのだろうけど、まだそんな気になれない。
足早に過ぎ去る人の向こう、壁に貼られた大きなポスターに、ふと目が留まった。
いかにも楽しげに笑っている女性が緑と寺院の間に立っている。JRでおなじみの京都旅行を勧めるポスターだ。
「……京都、行こうかな」
気がついたときには私はクロワッサンを口にねじ込んでコーヒーで流し込み、席を立っていた。
いつの間にか家に戻った私は、無心でキャリーバッグを用意していた。
着替えの服などをねじ込んだ私は、再び東京駅にやってきた。
先ほど眺めたポスターをもう一度確認。そうだ、京都へ行くんだ。
そのまま向かうは新幹線ホーム。カードで切符を購入し、駅弁を買った。ちょっと考えてビールも買う。
新幹線に飛び乗った。切符は窓際の席だ。
目指すは京都。日本人の心の故郷。
静かに新幹線が動き出した。
東京駅が後ろに流れていく。
そうだそうだ、京都に行くんだ。
私はちょっとぬるくなった缶ビールを開けた。
昼酒だって飲んじゃうんだから。
ぷしゅっという音がして、少しビールの泡が吹き上がった。