死神の恋
1.文化祭

“あさこうダンス部”というロゴが入った真っ赤なTシャツ、デニムのショートパンツ、学年カラーに合わせたヘアリボン。いつもはジャージで練習している私たちにとって、お揃いの衣装を身に着けただけでテンションが上がる。

「今日は楽しむよ!」

「はい!」

体育館裏で円陣を組み、ダンス部の部長である美南のかけ声に返事をすれば、部員の士気がさらに高まった。

九月第二週の日曜日。今日は私が通う旭ケ丘(あさひがおか)高校の文化祭。じっとしていても額から汗が滴り落ちてくる夏の暑さにうんざりしながらも練習に励んだのは、この文化祭でダンスを披露するためだ。

ひとりでも多くの人が楽しんでくれますように……。

心の中でそう願いつつ裏口から体育館に入るとステージに上がった。暗がりが広がるステージの上で、まずは二年生の部員がそれぞれの立ち位置につく。

今日は夏の大会で引退した三年生の先輩たちが見に来ているし、高校見学に訪れている中学生も観客の中にいるはずだ。

大勢の人の前でミスはできない。

そう思った途端、頭が真っ白になってしまった。

練習を重ねて覚えたはずの振りつけが、まったく思い出せない。喉がカラカラに渇き、体は緊張で強張り、背中に嫌な汗が伝った。そのとき、隣から小さな声が聞こえた。

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