死神の恋


『葉山、だっけ?』という北山くんの問いかけに対して「う、うん」とうなずく。返事がぎこちなくなってしまったのは、カッコいい北山くんを前に緊張してしまったから。けれど真美は私とは違い、クラスメイトの北山くんに気さくに話かける。

「ねえ、北山。バスケ部の練習って午後一時からだよね?」

今日の午後の体育館使用の割り当ては、ダンス部と男子バスケットボール部となっている。しかし今は正午を五分過ぎただけ。午後練習開始時間の一時まで、まだ五十五分もある。

「自主練。この前の練習試合のプレイ、マジでヤバかったからさ」

「そっか」

北山くんの説明に納得した真美が、コクリとうなずいた。

旭ケ丘高校の男子バスケットボール部は、毎年全国大会出場を果たしている強豪チーム。部長を務めている北山くんは、どの部員よりもバスケがうまいはずだ。

それなのに北山くんは才能の上にあぐらをかいているだけでなく、努力することを怠らない。彼の言葉は自主練習などしたことがない私にとって、耳に痛いものだった。

「新倉。昨日の文化祭のダンス、よかったよ」

「えっ、見にきてくれたの?」

「まあな」

北山くんと真美の顔に笑みが浮かぶ。

美男美女のふたりはとてもお似合いで、笑顔で会話を交わす彼ら姿をただ突っ立ったまま見ることしかできなかった。


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