死神の恋
黙々と勉強に励むこと一時間。「ちょっとトイレ」と言った真美が席を離れた。
さっきから教科書とノートに向き合ってはいるものの、なかなか勉強に身が入らない。思わず小さなため息を吐き出せば、彼が手にしていた本をテーブルの上に置いた。
「どうした?」
「えっ? なにが?」
「さっきから集中してない」
彼は私と真美に勉強を教えるとき以外は、ブックカバーがかかった本を熱心に読んでいる。そんな彼に図星をつかれてしまい、不甲斐ない気持ちでいっぱいになってしまった。
「私と違って真美って頭いいでしょ。それに美人だしスタイルもいいし……」
「……」
真美は自慢の親友。でも完璧な真美と一緒にいると、自分はつまらない人間なんだと痛感してしまう。
このモヤモヤした気持ちを抱えたまま勉強に集中することはできなくて、つい彼に愚痴のような話をしてしまった。
けれど彼は相づちを打つわけでもなく、黙ったまま私の話に耳を傾けるだけ。
「ごめん……なんでもない」
つまらない話をしてしまったことを謝ると、シャープペンを握り直した。しかし彼は私の思いとは裏腹に、話を続ける。
「劣等感?」
「……そう。小さい頃からなにをしても真美には勝てなかった」