死神の恋
彼の『劣等感?』という言葉を素直に認めたのは、テストの点数も、徒競走の順位も、そして容姿も、幼い頃から真美にはなにひとつ勝ったことがないから。
小学生の頃のようにお互いのテストの点数を見せ合うことはもうしないけれど、今回の定期考査も真美の方がいい点数を取るのだろうと考えただけで気分が沈んだ。
「アイツと一緒にいるのがつらいなら、友だちやめれば?」
真美と私は幼なじみで親友。隣に真美がいることがあたり前な環境で育ったし、真美がいない毎日など考えられない。
「嫌だよ。私、真美のこと大好きだもん」
彼のあり得ない言葉を速攻で否定してみれば、目の前にある少し厚みのある唇から笑い声が微かに漏れた。
「女子がつるむのって、よくわかんないけど……アンタに必要なのは自信じゃないの?」
「自信?」
「そう。ダンスのときのような自信」
彼は静かにそう言うと、小さくうなずいた。
私が思い出すのは、新人大会に向けて必死にダンスの練習に励んだ日々。朝から晩まで人一倍練習したという自信があったからこそ、満員のプラザホールで全力を出し切れた。