死神の恋
「へえ、そっか。じゃあ新倉はもう体育館にいるんだ」
「いると思うよ」
白い歯を見せて微笑んだ北山くんが、渡り廊下を足早に進み出した。
その北山くんの様子を見た私は、すべてを理解した。北山くんは真美のことが好きなんだと……。
真美のことを目で追っているうちに隣にいる私が視界に入り、苗字や私たちが一緒に体育館に来ることを北山くんは知った……。
事実を知った途端、胸がチクリと痛み出す。
これって、もしかして失恋したから?
自分の心に問いかけてみても答えは出ない。だって自分が北山くんに恋をしていたのかも、わからないのだから……。
「あっ、北山くん!」
「なに?」
渡り廊下を通り過ぎた北山くんを呼び止めると、大きく深呼吸する。
「練習がんばってね」
「ああ、葉山もな」
「うん!」
勇気を出して応援の言葉を伝えれば、北山くんも私を励ましてくれた。
心臓が再びドクドクと音を立てるのは、北山くんが私だけに笑いかけてくれたことがうれしかったから。でもこれが恋なのか、やはりわからない。
そういえば真美は北山くんのことをどう思っているのだろう。今度真美に、それとなく聞いてみよう……。
真美がどんな反応をするのかアレコレと想像しながら、北山くんの後に続いて渡り廊下を通り過ぎた、そのとき……。
「おい、そこのちっちゃいの」という声が耳に届いた。