死神の恋

いったい、なに?

勝手に話を進める彼に戸惑いながらも、突きつけられた一枚の紙切れを受け取り、それに目を通した。

「……あっ!」

私が大きな声を出してしまったのは、その紙切れがラッキーランドのパークチケットだったから。

「ひとりで行ってもつまらないだろ?」

彼は口角をあげて、もう一枚のチケットをかざした。

私に突きつけられたチケットと、彼の手もとにあるチケット。合計二枚のチケットがあるということは、ふたりで一緒にラッキーランドに行くってこと?

ラッキーランドに最後に行ったのは、高校に入学する前。久しぶりにラッキーランドで楽しみたいという思いが込み上げてくる。

でも、彼と一緒にというのは微妙だし、そもそもラッキーランドに誘われる意味がわからない。

「あの、これ……」

少しもったいない気はするけど、このチケットは受け取れない。

彼にチケットを返そうとした、その矢先「未来?」と不意に名前を呼ばれた。

いつまで経っても姿を現さない私を心配するように、真美が体育館の入り口からこちらを見つめている。

「今行く!」と返事をすると、彼に向き直った。でも、そこにいると思っていた彼の姿がない。

慌てて辺りをキョロキョロと見回せば、水飲み場の先にいる彼を見つけた。

チケットは返していないし、話もまだ終わっていない。

「あっ、ちょっと待って!」

徐々に小さくなっていく彼の後ろ姿に向かって叫んでも、その足は止まらなかった。

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