死神の恋

とにかく入手困難なパークチケットを気安くもらうわけにはいかない。やはりこれは彼に返そう。

真美から戻ってきたパークチケットを再びパスケースにしまいながら、そう決めた。でも……。

「ねえ、これってデートのお誘いじゃない?」

「えっ? デート?」

「そうだよ! アイツが未来に近づいてきたのは、未来のことが好きだったからだよ!」

さらに興奮した真美が、盛んにコクコクとうなずいた。

彼と初めて会ったのは、今から約三ケ月前の九月上旬。ダンスの特訓をしていた私に彼は『近いうちに死ぬぜ』と言い放った。

私だったら好意を寄せている相手に、そんな意味不明なことは絶対に言わない。

「それはないよ」

「ううん。アイツ、絶対に未来のこと好きだよ」

私がすぐさま否定してみても、真美は納得してくれなかった。

私の顔を見れば、死に関することしか口にしなかった以前の彼は嫌い。でも、なにかと私のことを気にかけてくれる最近の彼は嫌いじゃない。

これが今の私の気持ち。

けれど、このことを真美に打ち明けたら、私が彼のことを“好き”だと思っていると勘違いするに決まっている。

“好き”と“嫌いじゃない”の違いがよくわからず考えを巡らせてみても、答えは簡単には出そうもなかった。

もう、深く考えるのはやめよう。それよりも今は真美と北山くんのことの方が気になる。

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