死神の恋
十二月中旬の土曜日。彼との待ち合わせ場所である旭ケ丘駅に向かう。
彼が指定してきた旭ケ丘駅は、いつも私たちが利用している駅。今日は土曜日で学校は休みだけど、部活の練習のために登校する生徒の姿はある。
彼と一緒にいるところを同級生やダンス部のメンバーに見られて、デートだと勘違いされるのは恥ずかしい。
うつむきがちに、でも視線は上げつつ、上りホームで彼の姿を探した。すると、すぐに背後から「おい」と声をかけられた。
振り返った先にいたのは、もちろん彼だ。
「お、お待たせしました」
思わず口ごもってしまったのは、彼を意識してしまったから。
オリーブ色のモッズコートにジーンズ、そして黒のキャップを目深にかぶっている彼と、学校以外の場所で会うのは少し変な気分。
「いや、別に待ってないし」
相変わらずマイペースな彼がおかしくてクスッと笑うと、電車がホームに滑り込んできた。
開いたドアから電車に乗り込む。そして空いていた座席に並んで腰を下ろすと、すぐに電車が発車した。
旭ケ丘駅からラッキーランドまでは電車で約一時間。夢の国は思ったよりも近い。でも共通の話題がない私たちにとって、ラッキーランドまでの一時間はすごく長い時間になりそうだ。
いったい、なにを話そう……。
膝の上にのせた手をじっと見つめて考えにふけっていると、右肩にトンと衝撃が走った。
なに?と驚き、重くなった右肩に視線を向ける。すると腕組みをして、私にもたれかかるように眠る彼の姿が目に飛び込んできた。