死神の恋
「……なに?」と平静を装って尋ねると、彼が私に向かって顔を寄せてくるのが見えた。
「未来は、なにに乗りたい?」
「……っ!」
人が大勢いる車内で、腰を屈めた彼が私の耳もとでささやく。
突然近くなった距離と不意に呼ばれた名前を恥ずかしく感じると同時に、彼が何故私の名前を知っているのか疑問に思った。
しかしその理由を聞く前に、駅に到着した電車のドアが開く。そして後ろの人に背中を押されながらホームに降り立った。
けれど学校の最寄り駅である旭ケ丘駅とは違い、この駅のホームは長くて広い。いったい、どちらに行けばラッキーランドにたどり着けるのだろう。
右? 左?
辺りをキョロキョロと見回していると、先に電車から降りた彼が私の名前を再び呼んだ。
「未来、こっち」
人混みの中にいても目立つ背の高い彼の方へ足を進めれば、いたるところに“ラッキーランドはこちら”という案内が掲示されていることに気づいた。
彼に耳もとで名前を呼ばれたくらいで、案内にも気づかないなんて動揺しすぎでしょ……。
自分に自分でツッコミを入れつつ、階段を上がる彼の後をついて行った。
混雑している構内を進んで改札を抜けると、少し先にラッキーランドの入場ゲートが見えて、自然にテンションが上がった。
けれど、呑気に浮かれている場合ではない。