死神の恋

「俺は風間。……風間幸希(かざま こうき)」

私が彼について知っていることは、ほんのわずかなことだけ。

今までは彼に興味などなかったのに、今は彼のことをもっと知りたいという感情があふれて止まらない。

「どんな字を書くの?」

彼の横顔を興味深く見上げて尋ねてみれば、少しの間を開けて答えが返ってきた。

「……幸せに、希望」

彼の名を聞いた瞬間、自分の名前の由来について調べるという宿題があったことを思い出した。

私が「どうして未来って名前をつけたの?」と尋ねると、「未来(みらい)に向かってすくすくと育ってほしいからだよ」と父親が答えた。

彼の両親は、希望に満ちあふれた幸せな人生を送ってほしいという願いを込めて、幸希と名づけたのかもしれない……。

「そっか。いい名前だね」

彼の名前の由来について、ひとりで想像を膨らませる。そんな私に返ってきたのは、思いもよらない彼のひと言だった。

「これから俺のことは名前で呼んで。俺も未来って呼ぶから」

大胆なことをサラリと口にする彼を、信じられない思いで見つめる。

彼は私のことを『未来』と呼ぶことに抵抗はないらしい。けれど、ついさっき彼の名前を知ったばかりの私にとって『幸希』と呼ぶのはハードルが高い。

それに、お互いのことを名前で呼び合うなんて、まるでデートみたいじゃない?

「……呼べたら呼ぶ」と曖昧な返事をすれば、「なんだ、それ」と彼が笑った。

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