死神の恋
唇を噛みしめて部室に続く廊下を進んでいると、私を追ってきた真美が隣に並んだ。
「未来? どうしたの?」
真美は、様子がおかしい私を心配してくれている。そうわかっているのに、私の存在を忘れて北山くんと楽しそうに話をしていた真美が憎らしい。
「真美って……北山くんと仲がいいんだね」
私の口から咄嗟に出たのは真美に対する嫌味。こんなことを言うつもりなんてなかったのに……と、慌てて口を塞いでみても、もう遅い。
「普通だと思うけど……あれ? もしかして未来、北山のことが好きとか?」
「違うからっ!」
北山くんを前にして緊張したのは事実。でもそれが好きとかいう感情なのかわからない。もしかしたらカッコいい北山くんを間近に見た条件反射のようなものだったのかもしれない。
そう考えていると、ニヤニヤした笑みを浮かべた真美が私の顔を覗き込んできた。
「ムキになるところが怪しいな」
そう言われても自分でも自分の気持ちがわからないのだから、どうしようもない。
「本当にそんなんじゃないから」と少し冷静になった私が答えると、真美は「そっか」と納得してくれた。