死神の恋
クリスマスを十日後に控えたラッキーランドは、多くの人で賑わっている。でも彼から渡された日付指定のパークチケットのお蔭で、すんなりと入場ゲートを通ることができた。
「未来はなにに乗りたい?」
入場ゲートでもらったラッキーランドのマップを広げた彼が、私に尋ねてくる。
電車内で聞いてきたことと同じ質問をしてくる彼に返すのは、この言葉。
「全部っ!」
混雑した中ですべてのアトラクションに乗るのは、絶対に不可能。それでも『全部っ!』と子供染みたようなことを口にしてしまうのは、久しぶりのラッキーランドに興奮しているせいだ。
「……メッチャ欲張り」と私にあきれる彼を前に「だって、全部制覇したいんだもん」と力説した。すると彼は広げていたマップを折り畳むと、モッズコートのポケットにそれをしまった。
「それじゃあ、まずはアレからだな」
彼が指をさしたのは、右手奥にあるジェットコースター。ラッキーランドを右回りに攻略する作戦に、マップはもう不要だ。
アトラクション完全制覇を目標に掲げて意気揚々と足を一歩踏み出したそのとき、あることにハッと気づいた。
期間限定のクリスマスイベントが開催されることもあり、ラッキーランドは様々な年齢層の人であふれ返っている。
「あっ! はぐれたら困るから、連絡先教えて」
お互いの連絡先を知らずに離れ離れになってしまったら大変だ。