死神の恋
そんな危機感を覚えた私は、彼と連絡先を交換するためにバッグからスマホを取り出した。けれど彼の口から、まさかの言葉が飛び出る。
「俺、携帯持ってない」
「えっ? どうして?」
「面倒だから」
私の質問に淡々と答える彼を、じっと見つめた。
おじいちゃんやおばあちゃんでもスマホを持っているというのに、現役高校生である彼がスマホを持っていないという事実が信じられなかった。
昼休みは裏庭で居眠りをするのは、もしかしたら友だちがいないから?
たしかに彼は口数も少なく、大勢の友だちとワイワイ騒ぐようなタイプには見えない。でも彼は、私をラッキーランドに誘ってくれた。
もしかしたら私は、彼にとって特別な存在?
そんな優越感を抱いたのも束の間、私に向かって彼の手が伸びてきてくるのが見えた。
「こうすれば、はぐれないだろ?」
彼はそう言うと、私の手をギュッと掴んだ。
「あ……うん」
不意に握られた手を振り払わなかったのは、彼の温もりが嫌じゃなかったから。
彼の大きくて厚くて温かい手を握り返しながら、これじゃあ、まるでデートみたいだと思った。