死神の恋
彼と手を繋いで混雑しているラッキーランドを移動する。アトラクション完全制覇と息巻いたものの、百二十分待ちという案内を見た瞬間その思いがすぐにしぼんだ。
「あ、そうだ。チケット代」
アトラクションの最後尾に並ぶと、彼にパークチケット代を払うために、バッグからお財布を取り出す。けれど私のその動きを、彼が制した。
「これは俺が勝手に用意した物だから」
「でも……」
たしかに私は、なんの前触れもないまま強引に、彼からパークチケットを突きつけられた。でも今はこうしてラッキーランドを楽しんでいるし、なによりパークチケットは高い。
本当にこのまま彼の好意に甘えていいの?
手にしているお財布を見つめて悩むこと数秒、彼がポツリとつぶやいた。
「それじゃあ、昼ご飯、ごちそうして」
今日、親にはダンス部のメンバーとラッキーランドに行くと嘘をついた。その上、手持ちのおこづかいでは心もとないと言って、来月分を前借りした。
パークチケット代に比べたら、ふたりの食事代ははるかに安い。私の負担を減らそうとしてくれる彼の気遣いをうれしく思った。
「ありがとう。じゃあ食事は私持ちね」
「サンキュ」