死神の恋

お財布をバッグに戻しながら気になったのは、彼の私生活。高校三年生である彼が私にパークチケットをくれるほど余裕があるのは、どうしてだろうと思ったのだ。

「バイトしてるの?」と彼に尋ねれば「してる」という短い答えが返ってくる。

「へえ、どんなバイト?」

「ピッキング」

コンビニとかファミレスでバイトしていると言われたら、どんなことをするのか、すぐにピンとくる。けれど、ピッキングと言われても仕事内容がよくわからない。

「ピッキング?」と首を傾げると「倉庫で商品を箱に詰めたり運んだりする仕事」と彼が説明してくれた。

バイト未経験の私にとって、彼の話は興味深い。

「私もバイトしようかな」

新しい服にシューズにバッグ。私にはほしい物がたくさんある。

「ダンスは?」

「……ダンスもしたいけど、おこづかいもほしい」

「欲張り」

お互いの顔を見合わせると、クスクスと笑った。

ひとりなら永遠に感じられるアトラクションの待ち時間も、彼と一緒だとちっとも苦にならなかった。

< 123 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop