死神の恋
アトラクションを楽しみ、ラッキーランドでしか食べられない食事を堪能し、たくさんのグッズであふれ返るショップを覗く。夕方にはパレードもあるし、夜には花火が打ち上がる。
母親には「夜道は危ないから早く帰って来なさい」と釘をさされたけれど、私は閉園時間までラッキーランドを楽しみたいと思っている。
「ねえ、今日は何時までいられるの?」
彼の都合を聞くために隣に視線を移した。そのとき、それは起きた。
ラッキーランドを進んでいた彼の足が不意に止まり、繋いでいた手がするりと緩んで離れる。
私の斜め後方で立ち尽くす彼を不審に思い「どうしたの?」と声をかけた。けれど彼からの返事はない。
ラッキーランドは多くの人が行き交い、混雑している。その中で呆然とたたずむ彼は、明らかに様子がおかしかった。
もしかしたら、具合が悪い?
黒いキャップを目深にかぶっている彼の顔色をうかがうことはできない。しかし、ついさっきまで私と繋いでいた彼の手が小刻みに震え出す様子を目にしたら、これはただごとではないと察した。