死神の恋
「大丈夫?」
私が声をかけたその前で、フラフラとよろめいた彼が後方に倒れ込むのが見えた。
電車に乗るとすぐに居眠りをしたのは、調子がよくなかったからかもしれない……。
久しぶりのラッキーランドに舞い上がってばかりいて気を配れなかったことを激しく後悔しながら、地面に尻もちをついたまま動かない彼のもとに慌てて駆け寄った。
すると、うつむいていた顔を上げた彼がぎこちなく口を開く。
「……ここから離れよう」
彼はそうつぶやくと、私の手首を掴んで立ち上がった。
具合が悪いなら、今すぐラッキーランドを出て家に帰った方がいい。けれど声と体を震わせて、この場から立ち去ろうとする彼の様子は、なにかに怯えているようにも見える。
いったい、彼になにが起きたの?
戸惑いつつ彼の顔を覗き込もうとしたとき、耳をつんざく爆発音がラッキーランドに響き渡った。
轟く悲鳴、泣き叫ぶ声、そして逃げまどう人々……。
夢の国だったラッキーランドは一瞬のうちに、大混乱に陥る。
「未来、ここから離れよう」
「う、うん」
彼と一緒にラッキーランドの出口に向かって走り出す。
彼に手首を引かれながら振り返れば、青空に向かって黒煙が昇っていくのが見えた。