死神の恋

それでも彼に不機嫌な様子を見せるのは子供っぽいような気がして、無理して平静を装った。けれど、それもままならなくなるほどの衝撃的な言葉に襲われた。

「俺、親に見捨てられたんだ」

「えっ?」

「変なモノが見える俺が気持ち悪いってさ……」

彼はそう言うとキャップのつばに触れ、それをさらに深くかぶった。

ラッキーランドで尻もちをついた彼が『ここから離れよう』と言い出した意味が、今ようやく理解できた。

「あのとき……見えたんだ?」

彼は黙ったまま、首を縦に振った。

あのとき……彼が繋いでいた手を離してよろめいたのは、具合が悪かったからじゃない。

大勢の人が行き交うラッキーランドでただひとり、見えてしまう恐怖と戦っていた彼を思ったら、胸が締めつけられるように痛んだ。

「ごめんね。気づいてあげられなくて……ごめんね」

ベンチに腰かけたままうなだれる彼の背中に腕を回すと、小さく震えるその体を力いっぱい抱きしめた。

クリスマスデコレーションで華やぐラッキーランド。彼の目にはどのように映っていたの?

無理をしている彼に気づかずに浮かれていた自分を激しく呪った。

とにかく今はなにも考えず、体と心を休めてほしい。

その願いを胸に彼の広い背中をさする。するとすぐに、彼の体の力が抜けていった。

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