死神の恋
ずっと疑問に思っていた。佐伯のおばあちゃんが台所で倒れたことを、どうやって知ったのかと……。
あの日……。彼と初めて会った日の週末の金曜日。真美と別れて家に帰る途中で、私は佐伯のおばあちゃんと出くわした。
そんな私に声をかけてきた彼は、おばあちゃんの魔物に気づいて目を凝らした。そして、おばあちゃんの死を見た。
長めの前髪で瞳を隠すのも、黒いキャップを目深にかぶるのも、裏庭で昼寝をするのも、今日、電車に乗るとすぐに居眠りしたのも、人に取り憑いている魔物を見るのが嫌だから……。
「ラッキーランドで魔物に目を凝らしてしまったのは、未来と一緒にいることが楽しくて気が緩んだからなんだ」
彼はそう言うと、ラッキーランドがある方角を見つめた。
私と一緒にいると楽しいと言ってくれたことはうれしい。でも彼には、私の胸の辺りに取り憑つく魔物が見えているはずだ。
「今も見えるの?」
「……うん」
彼は一瞬、躊躇(ためら)ったものの、今も私に魔物が取り憑いていることを認めた。
死の恐怖から逃れたい一心で、ダンスと勉強に打ち込んだ。でもダンスの楽しさを、学ぶ喜びを、知れば知るほど死ぬのが怖くなる。