死神の恋

「やだ……。怖い。死にたくない」

彼が今まで誰にも話せなかったことを私に打ち明けてくれたように、私も誰にも言えない胸の内を漏らし、すがるように彼に抱きついた。

「大丈夫だよ、俺が守るから……。未来は俺が守る」

「うっ……」

耳もとで聞こえた彼の優しい言葉を聞いた瞬間、涙腺が緩み出す。モッズコートを握りしめると、彼の胸に額をつけて大粒の涙を流した。

「俺、未来を泣かせてばかりいるな。笑ってほしくて、ラッキーランドに誘ったのに……」

死ぬのが怖くて彼を頼ったはずなのに、今では思いやりにあふれたその言葉がうれしくて涙が止まらない。

私を抱き留めてくれる彼の体温が心地いいから、瞳を閉じて彼との甘いひとときに酔いしれた。

このまま、ずっとこうしていたい……。

そう願った瞬間、彼のくぐもった声が耳に響いた。

「未来、好きだよ」

なんの前触れもなく紡がれた言葉に驚いて閉じていた瞳を開けると、弾かれるように彼の顔を見上げる。

視界を邪魔する涙を指先で拭えば、二重の丸い瞳が見えた。長めの前髪をサイドに流し、私をじっと見つめるそのまなざしは真剣そのもので、彼の思いが本気だということが痛いほど伝わってきた。

「私も好きだよ……幸希」

彼への思いが、口から自然にこぼれ出た。

私の顔を見れば、死に関することしか口にしなかった彼を何度憎んだかわからない。でも人は変われる。

命を喰らう魔物から私を守ると言ってくれた、彼のように。ダンスと勉強に夢中になれた、私のように……。

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