死神の恋
「友だちが彼氏にあげるクリスマスプレゼントに悩んでいるんだけど……。幸希なら、なにをもらったらうれしい?」
私が今悩んでいるのは、幸希へのクリスマスプレゼント。『友だちが』というのは真っ赤な嘘で、本当は私が幸希へあげるクリスマスプレゼントに悩んでいるのだ。
バイトはしていないから高価な物は買えない。だからといって消しゴムやノートをプレゼントするのは小学生みたいで恥ずかしい。
初めてのクリスマスプレゼントは手頃な値段で買えて、幸希がほしがっている物がいい。でも幸希から返ってきたのは、ありふれた答えだった。
「好きな相手からのプレゼントなら、なんでもうれしいと思うけど?」
「それじゃあ、困るっ!」
咄嗟に本音が漏れてしまい、慌てて口を手で塞いだ。すると幸希の口角がニヤリと上がる。
「困るって誰が?」
「と、友だちが……」
幸希の質問にぎこちなく答える。
「へえ、友だちねえ」
「そ、そう。友だち……」
『友だち』を強調する幸希は意地悪だ。
「それじゃあ聞くけど、未来なら、なにをもらったらうれしい?」
今、私が一番ほしいのはミディアム丈のピンク色のコート。それからオフホワイトのタートルネックのセーターもほしい。
でも幸希の言う通り、好きな相手からのプレゼントなら、なにをもらってもうれしい。たとえそれが、消しゴムやノートであったとしても……、
「……なんでもうれしい」
「だろ? 友だちにそう言えば?」
「……そうする」
リサーチは失敗。
幸希と別れると、肩を落としながら練習に向かった。