死神の恋
今が楽しければいいと思っているわけではない。でもダンスが最優先の毎日を過ごしている今は、将来のことまで考える暇がないというのが正直なところ。
将来のことが急に不安になり、トレーニングウエアとシューズが入ったサブバッグを胸にギュッと抱え込む。すると、さつき台駅に到着するというアナウンスが電車内に流れた。
私と真美の地元であるさつき台駅は、駅直結のショッピングモールがある。そのため、電車から降りる人も乗り込んでくる人も多い。
人波にもまれながらさつき台駅に到着した電車から真美とともに降りると、ショッピングモールとは反対側の東口に向かって改札を抜けた。
ショッピングモールがある西口は大勢の人で賑わっているけれど、住宅街に近い東口はコンビニと数件の飲食店があるだけ。だから人の姿はさほど見あたらない。
電車の混雑から解放されてホッと気が緩むと同時に始まるのは、真美とのおしゃべり。部活中はしゃべる暇はないし、真美とはクラスも違う。通学時の今が、おしゃべりを楽しむ唯一の時間なのだ。
「ねえ、未来。聞いてよ。剛のヤツ、彼女できたんだって」
「えっ、本当に?」
「うん。今度の土曜日、デートするんだって。受験生なのに生意気だよね」