死神の恋
プラチナガーデンの広場に立ち並ぶクリスマスマーケットのお店で、ドイツ風ビーフシチューとソーセージ、そしてクリスマスシュトレンを幸希とシェアして食べる。
お腹も心も満足した私たちは手を繋ぎ合うと、プラチナガーデンを後にした。
シャンパンゴールド色に輝く街路樹のイルミネーションを楽しみながら、東京駅に向かって進む。
「未来がくれたマフラー、メッチャ温かいんだけど」
幸希はそう言うと、紺色のマフラーに顔をうずめた。
幸希へなにをプレゼントするか悩んでいた私が選んだのは、紺色のタータンチェックのマフラー。私がいつも身に着けているベージュ色のタータンチェックのマフラーと色違いだ。
「よく似合ってるよ」と褒めれば、幸希が瞳を細めて笑った。
大好きな人と過ごすクリスマスイブがこんなに楽しいことを、私は生まれて初めて知った。
このまま、クリスマスイブが永遠に終わらなければいいのに……。
急に物悲しい気持ちになってしまった私は、東京駅に向かって進めていた足を止めた。
「未来?」
不意に立ち止まった私を心配するように、幸希が声をかけてくる。
「……帰りたくない」
クリスマスイブは、まだ終わっていない。
もっと一緒にいたいという思いを伝えると、幸希の瞳が大きく揺らぐのが見えた。
クリスマスイルミネーションで華やぐ東京駅周辺は、多くの人が行き交い賑わいを見せている。
そんな喧騒の中、幸希の低い声が耳に届いた。
「……俺のウチ、行こうか?」
初めて聞く艶っぽい幸希の声に、心臓がトクンと跳ね上がる。
夜遅くに男の人のウチに行くという意味がわからないほど、私は子供じゃない。
コクリとうなずくと、幸希に手を引かれながら東京駅に向かった。