死神の恋

肌を刺すような朝の冷たい空気に肩をすくめてコンビニを探す。幸希のマンションがある駅に降り立ったのは、昨日が初めて。

右も左もわからない土地で迷子にならないように気を張りつつ足を進めていると、道路の斜め向かい側にコンビニを見つけた。

幸希のマンションからあまり離れていない場所にコンビニがあって、よかった……。

ホッと胸をなで下ろして交差点まで歩き、信号が青になるのを待った。

私を照らす太陽の日差しがまぶしくて目を細めると、手にしていたスマホがブルブルと震えた。画面に表示されたのは、【早く帰って来なさい】という母親からのメッセージ。

相変わらず命令口調な母親にイラついてしまう。

親にはダンス部のクリスマスパーティーに参加するということと、盛り上がったらダンス部のメンバーのウチのお泊りするかもしれないということを伝えて外出した。

だから今回のお泊りは、無断外泊ではない。でも泊まった先がダンス部のメンバーのウチではなくて、幸希のマンションだと母親に知られては困る。

真美に口裏合わせをお願いするためにメールアプリを起動させた。すると、信号が青に変わる。

片側二車線の道路を横断しながら考えるのは、真美へ送信するメッセージの内容。口裏合わせを頼むからには、幸希のマンションに泊まったことを打ち明けなければならない。

昨夜のことをいろいろと聞かれたら、恥ずかしい……。

無我夢中で幸希の背中に腕を回した昨夜の出来事を思い出した途端、頬がポッと熱を帯びた。

清々しい朝には不適切な記憶を慌てて頭から消し去ると、横断歩道を渡る足を速めた。その瞬間、ある異変に気づく。

< 145 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop