死神の恋

いったい、なに?

恐怖と戸惑いで頭が混乱し始める中、私たち三人を取り巻くように風がふわりと舞った。

クシャリとした彼の前髪が風になびく先に見えたのは、二重の丸い瞳。ブラウン色のその瞳は大きく見開かれていて、なにかに驚いているようだ。

多くの人は見た目が平凡でこれといった特徴のない私より、美人な真美に興味を持つ。それなのに彼は私を食い入るように見つめたまま、微動だにしない。

まるで時間が止まったようにピクリとも動かない彼に腕を掴まれたまま、数秒が経ったとき……。

「未来? 知り合い?」

真美の言葉でハッと我に返った彼の手が、私の腕から離れていった。その隙に足を後退させると、彼から距離を取る。

男子にしては長めの髪の毛に、陶器のような白い肌。特徴的な彼に落とし物を拾ってもらったり、廊下の曲がり角で鉢合わせしたのなら、きっと彼のことを覚えているはずだ。

「ううん。知らない」

首を左右に振りつつヒョロリと背が高い彼を観察するように見つめれば、その足もとに目が留まった。

彼が履いているのは青いラインが入った学校指定の上履き。私たち二年生の学年カラーは赤だから、彼は一学年上ということになる。

三年生で知っているのは、ダンス部の先輩だけ。やはり私は彼のことなど知らない。

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