死神の恋
ひとりだったら、文句など絶対に言えない。けれど今は隣に真美がいる。
自分はひとりじゃないという安心感のせいで気持ちが大きくなり、校舎に向かって進めていた足を止めた。
感情的になってはだめだ。あくまでも冷静に……。
心の中で自分にそう言い聞かせると、彼に向き直る。そしてひと言文句を言おうとしたその矢先、私より先に彼の口が開くのが見えた。
「オマエさ……近いうちに死ぬぜ」
彼の口から飛び出した言葉はあまりにも唐突すぎて、頭が回らず理解できない。
「……えっ?」
いったいこの人は、なにを言っているのだろう……。
そんなことをぼんやりと考えていると、彼が再び口を開いた。
「だから、オマエ死ぬんだって」
同じ言葉を二度聞いた私がようやく我に返ったのは、彼がヤバいヤツだと気づいたから。今日初めて会った私に対して『死』というワードを口にするのは正気じゃない。
「未来、行こう」
真美が冷静に声をかけてきたのは、私と同じように彼が普通じゃないと思ったからだろう。
「うん」と返事をすると、裏庭から一目散に走り出す。
もう、裏庭に来るのは今日が最後。そして彼に関わるのも……。
息を切らせ全力で走りながら、私は心の中でそう誓った。